Q:特別利害関係を有する取締役とはどのような取締役で、取締役会はどのように行えばいいのでしょうか。

A:「特別利害関係を有する取締役」は、取締役会の議決に加わることができません(会社法368条2項)。また、取締役会決議の定足数は、「議決に加わることができる取締役の過半数」の出席となっています(会社法369条1項)。さらに、「特別利害関係を有する取締役」がいる場合は、当該取締役の氏名を取締役会議事録に記載しなければなりません(会社法施行規則101条3項5号)。

 このように、取締役会決議をするにあたって、当該取締役が、「特別利害関係を有する取締役」にあたるかどうかは非常に重要です。しかしながら、どのような取締役が「特別利害関係を有する取締役」にあたるかは、会社法の条文上明確な記載がなく、判断が難しい場合もあるかと思います。

そもそも、「特別利害関係を有する取締役」が議決に加わることができないとされているのは、取締役が会社に対し、善管注意義務(民法644条)・忠実義務(会社法355条)を負っていることから、このような義務を果たすことが期待できないような場面においては、決議に参加させないことによって、取締役会決議の公正を保持しようとする趣旨だとされています。

 では、具体的にどのような場合に「特別利害関係を有する取締役」にあたるのでしょうか。
・競業取引の承認(会社法356条1項1号)における取締役
・利益相反取引の承認(会社法356条1項2号、3号)における取締役
・取締役の責任の一部免除をする場合(会社法426条)における当該取締役
・譲渡制限株式の譲渡承認における取締役
・監査役設置会社以外の会社における会社・取締役間の訴えの代表者選任(会社法364条)における取締役
・代表取締役の解任決議における当該代表取締役(最判昭和44年3月28日)

 これらはすべて、「特別利害関係を有する取締役」にあたるとされています。

他方で、次の場合は「特別利害関係を有する取締役」にはあたらないとされています。
・代表取締役の選定について、候補者である取締役
・各取締役の具体的な報酬額の決定をする取締役会において、報酬を受けるべき取締役(名古屋高判昭和29年11月22日)

 「特別利害関係を有する取締役」にあたる場合に、そうとは気づかずに決議を行ってしまうと、取締役決議に瑕疵が生じることになりますので、議案に関して取締役に利害関係がありそうだと思われる場合には、十分に注意してください。