Q:反社会的勢力や悪質クレーマーの不当要求に応じてしまったとき,お金は戻ってこないのでしょうか。~刑事事件~

(この文章は,平成30年6月20日の京都府暴力追放運動推進センターによる不当要求責任者講習の田中継貴弁護士の講演内容を再構成しています。)

暴力団に対する損害賠償請求(その1)

1 不当要求をされて,実際に,要求に応じて金,たとえばみかじめ料のような金を渡してしまった。そのときに,どうやってそのお金を回収するのかというお話しです。

暴力団員に,みかじめ料を請求されたら,そして,払ってしまったら,どうしますか。
色々選択肢はあると思いますが,とりあえずは,相談してください。こんなこと,一人で悩むことではないです。

もちろん,取られた金額など事情によっては,最終的に何もしないという選択肢もあります。しかし,暴力団やえせ右翼,えせ同和についていいますと,こちらが不当要求に屈するということは,次の不当要求を招くということになります。講習のビデオで見られたかもしれませんが,「社長,また今年も門松10万円で買ってください。」となります。
では,諦めずに戦っていくとして,どうするか,です。

2 恐喝罪,強要罪,脅迫罪で,被害届,告訴
暴力団関係の事件では,警察に頼ることは,とても有効です。犯人が、わかりやすい感じで,恐喝してたり,脅迫してたりすると,動いてもらいやすいと思います。
方法としては、警察へ相談に行って、被害届を出す、あるいは一歩すすんで、告訴をするという手続きが考えられますが、実際に、どのような手続きをとっていくかは、警察の指導に従えばいいと思います。
刑事事件として動いていって、逮捕とか裁判とかまで進めることができますと,相手から被害の弁償を受けられる可能性も出てきます。ただ、金額的に,相手がもはや払えるような金額でないときとか、被害弁償したところで、執行猶予がつかない厳しい判決になるという場合には、被害弁償を受けられない可能性もあります。

また,刑事事件として逮捕とか裁判まで行ったとしても,それは被害のごく一部で,残りの9割くらいの損害が立件されなかったということもありえます。そうすると,起訴されたごく一部だけしか,被害弁償をしてこなかったということもありえます。

したがいまして,刑事事件として立件を目指すという方針は,いいと思うのですが,一般論としていえば,民事事件よりも,証拠がはっきりしていないと難しいというのと,そのために,被害の全部を取り戻せるかはわからないというところがあります。

(その2につづく)