Q:反社会的勢力や悪質クレーマーの不当要求に応じてしまったとき,お金は戻ってこないのでしょうか。~組長訴訟~

(この文章は,平成30年6月20日の京都府暴力追放運動推進センターによる不当要求責任者講習の田中継貴弁護士の講演内容を再構成しています。)

暴力団に対する損害賠償請求(その3)

恐喝行為を行ってきた人を相手に裁判に勝訴しても,必ずしも被害が回復しない可能性があるというお話しをしました。
そこで,出てくるのが,組長訴訟です。これは,組員の不法行為を理由として,組長を相手に損害賠償請求の訴訟をするというものです。

色々と,理論上の問題があるのですが,厳密には,理論上の問題があったのですが,それは今日は省きます。最高裁判所で,組長,特に,上部団体の一番上の組長を相手に損害賠償請求を認めるという判決が出されました。
組長訴訟というのは,使用者に責任を負わせる民法715条を利用して,組員が起こした不法行為について,組長に損害賠償請求をするというものです。そして,直属の組長ではなくて,最上位組織の組長を相手に請求を認めたという画期的な最高裁の判例が出ています。

そして,これを受けて,暴対法も改正され,最上位の組長に責任を追及しやすいような新しい条文も作られました。
この法律構成であれば,上納金が集まってくる一番上の,最上位の組長に対して,損害賠償請求をすることができますので,さすがに,金がなくて強制執行ができないということは考えにくいですし,最上位の組長も強制執行されるのは困ると思いますので,任意に損害賠償金を払ってくれたり。あるいは,そうでなくても,和解になって,被害弁償が行われることが多くなります。

平成28年3月8日の読売新聞によりますと,十数件起こされた最上位の組長を相手にする訴訟のうち,審理中の5件を除いて,9件で和解になって,詐欺事件やみかじめ料の事件で1000万円を超える和解金が支払われたり,死亡者が出た事件では,1億数千万円の被害弁償が行われています。最近,有名なところですと,暴力団員が関与して行われた組織的な特殊詐欺について,最上位の組長を訴えているという組長訴訟があります。

こういう手段,組長を相手に訴えるという手段があるということを知っておいていただけると,泣き寝入りしないで済むかもしれません。