Q:反社会的勢力や悪質クレーマーから,現在受けている不当要求にはどのように対応すればいいでしょうか。

(この文章は,平成30年6月20日の京都府暴力追放運動推進センターによる不当要求責任者講習の田中継貴弁護士の講演内容を再構成しています。)

現在進行形の不当要求に対して

暴力団のような反社会的勢力からの不当要求を現に受けている場合どのように対応するか,弁護士なら,どのように解決するかというお話しをします。
実は,普通の不当要求に対しての対応の形や手順というのは,民暴事件に慣れている弁護士の目から見ると,かなり確立されています。不当要求があったときには,弁護士から内容証明を送り,それでも不当要求が止まらなければ,仮処分の申立を行って裁判所から命令をもらうという流れになります。もちろん,不当要求に関連して,恐喝とか脅迫と言えそうな事情があれば,警察に相談に行ってもらうことになります。
直接的に暴力団を名乗って不当要求してくると言うのは最近減っていると思いますが,不当なクレーマーのような,法的根拠のないような,あるいは,請求手段が脅迫的で異常な手段を講じてくる,そういう不当要求は,最初の内容証明送付の段階で,多くの場合,止まります。個人的な経験上もそうです。

弁護士が内容証明を出しても止まらない場合,次の手段は,仮処分を裁判所に申し立てるという方法です。
たとえば,脅迫的な連絡を受け続けている場合などは,面会を求めないとか,連絡をしないとか,そういう命令出してもらえるように申立します。あるいは,えせ右翼から,街宣活動を受けているという場合は,街宣活動の禁止を求めます。
もちろん,これも,裁判所から命令をもらうだけで,相手の身体を拘束するという類いの効果はないですが,内容証明で止まらない不当要求の場合も,裁判所から命令が出れば,要求が止まることが多いと思います。その後,名誉毀損等で,損害賠償請求がしたいときは,通常の裁判を行うことも考えられます。損害もほとんどないのに多額の損害賠償請求をされているという場合には,債務不存在確認請求という訴訟も考えられます。

このように,民暴弁護士の目から見れば,実はやることは,ある程度決まっています。中心は,内容証明と仮処分です。
中には,相手に弱みを握られて,不当要求を受けているという場合もあるかもしれませんが,弁護士は相談者に対して守秘義務を負っており,秘密は厳守しますので,一人で悩まずにご相談いただければと思います。