Q:労働審判とはどのような手続でしょうか。

 労働関係紛争が生じた時、その解決方法は、企業内の苦情処理制度の利用や都道府県労働局による個別労働紛争解決制度など数多く存在します。
 今回は、その解決方法のうち労働審判制度について説明します。
 労働審判制度とは、個別的な労働関係紛争を迅速かつ実効的に解決するためのシステムです。

 この労働審判手続の特徴は、
①審判体として、裁判官1名だけでなく、労働関係に関する専門的知識及び経験が豊富な審判員が2名(労働者側の労働審判員1名及び使用者側の労働審判員1名)参加するので、労使関係の紛争解決の内容にこれらの審判員の経験や知識が反映されること
②原則、2回から3回の期日において審理を終結することから、迅速な手続きであること
③労働審判が確定すれば、裁判上の和解と同様の効力があり、また訴訟手続きとも連携しているため、実効性ある解決が図られること
にあります。

 そして、会社が労働審判制度を利用する最大のメリットは、紛争の早期解決を図ることができる点にあります。
 会社にとって、労働紛争の存在はプラスになることはほとんどありません。そのような労働紛争を、訴訟に移行する前に、適切妥当に解決できるのであれば、人事担当者の負担や弁護士費用の負担を減らすという点でもコストパフォーマンスは良いということになります。
 したがって、紛争内容によっては、労働審判での解決を頑なに拒むという必要もないのではないかと思います。

 では次に、労働者から労働審判の申立てがされた場合、会社としては、どのように対応すればいいのでしょうか。
 前述のように、労働審判は原則3回以内の期日で終結するという簡易迅速な手続きです。また、実務上、第1回期日において全ての主張、立証を尽くさせ、直ちに調停を行うという運用が広くなされています。
 したがって、会社としては、最初に裁判所に提出する答弁書及び証拠書類の段階で、できる限りの主張と立証を尽くす必要があります。

 また、第1回期日は審判の申立てがされた日から40日以内の日に指定され(労働審判規則13条)、答弁書の提出期限は、「答弁書に記載された事項について申立人が第1回期日までに準備をするのに必要な期間を置いたもの」とされていることから(同規則14条)、答弁書の提出期限は、実質的に、会社に申立書が届いてから約1か月以内ということになります。
 さらに、第1回期日までに答弁書や証拠書類を用意するためには、短期間で関係者から事情聴取を行い、書類を作成しなければならず、会社の負担は非常に重いものとなります。

 このことから、会社に労働審判申立書が届いたら、迅速かつ適切な解決のためにも、すぐに弁護士に相談されることをお勧めします。