Q:労働契約の終了原因は、どのようなものがあり、どのような特徴がありますか。

1 はじめに

 すべての従業員が円満に退社していくわけではなく、会社と従業員がトラブルになることは、けっして少なくはありません。
 また、法律上、解雇が簡単に認められるということはありません。
 雇用契約(労働契約)の終了事由には、様々なものがあります。
 会社として、雇用契約の終了事由について十分に理解しておくことは重要です。

2 解雇と辞職

 解雇とは、問題のある従業員との雇用契約を解約するという会社からの一方的な意思表示をいいます。
 辞職(従業員からの雇用契約を解約するという一方的な意思表示)は、解雇と対照的なものといえます。
 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます(労働契約法16条)。

 また、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができないとされています(労働契約法17条)。
 このやむを得ない事由は、期間の満了を待てないほどの事情を意味するとされ、労働契約法16条よりも厳しい要件といえます。
 その他、解雇には、業務災害・産前産後における解雇制限(労働基準法19条)、解雇の予告(労働基準法20条)などの法令上の規制があります。

3 雇止め

 雇止めとは、会社が有期労働契約を更新しないことにより、労働契約が期間満了により終了することをいいます。
 有期労働契約の終了が期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の終了と社会通念上同視できると認められる場合、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、従業員が希望すれば有期労働契約は法定更新されるということになります(労働契約法19条)。
 また、有期労働契約が無期労働契約に転換されるという点にも注意を要します(労働契約法18条)。

4 定年制

 最高裁は、定年制について「人事の刷新・経営の改善等、企業の組織および運営の適正化のために行われるものであって、一般的にいって、不合理な制度ということはでき」ないとしています(秋北バス事件・最大判昭和43年12月25日)。
 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律が施行されましたが、これは定年制に関する法的規制といえます。

 なお、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の高年齢者の雇用確保の措置を講じることを義務付けているものであり、個別の従業員を同一の労働条件にて65歳までの雇用義務を課すものではありません。ただ、多くの企業で、定年後の再雇用の措置等が採られています。

5 合意解約

 合意解約とは、会社と従業員、当事者の合意(意思表示の合致)によって労働契約を終了させることをいいます。自主退職、依願退職とよばれるものがこれにあたります。
 合意解約に関しては、法令上の規制はなく、当事者の合理的な意思に委ねられています。
 合意解約も当事者の合意であることから、(会社または従業員の一方からの)解約の申込みという意思表示と、これに対する(もう一方の相手方からの)承諾という意思表示の合致が必要です。

 基本的に、従業員による合意解約の申込み(退職願の提出、口頭による申出など)は、会社が承諾するという意思表示を行うまでは、いつでも撤回できると解されています。
 退職願を提出した従業員が翌日冷静になって、また、知人に相談するなどして、解約の申込みの意思表示を撤回するケースは多々あります。

 口論の末、ケンカ別れとなった、従業員から退職願をもらっていない、退職承認通知書を従業員に渡していないなどの場合、合意解約の事実を立証できなければ、法的には労働契約は継続しているとされ、その間の未払賃金を請求されるといったトラブルにも発展しかねません。
 簡単なもので結構ですので退職承認通知書を常に準備し、従業員の気が変わらないうちに、交付することが大切です。

6 最後に

 解雇に対する裁判所の判断は、会社にとって、非常にシビアです。会社に対する犯罪行為が行われたなどのケースでもない限り、会社から一方的に従業員を解雇することはほとんどできないと思っていただいた方がいいと思います。そのため、中途で従業員に辞めていただきたい場合には、そのほとんどの場合で、上記5の合意解約を目指すことになります。