Q:「賃料をずっと支払っていないのだから、どうにかして賃借人を追い出したい。」どのような方法があるのでしょうか。

A:不動産賃貸借において、このような相談が多数あります。

結論から言いますと、任意の交渉が難しいようであれば裁判等の法的手続きを選択する以外に解決する方法がありません(もちろん、諦めるという方法もありますが。)。しかし、中には長期間賃料を払っていないことや賃貸借契約を解除したことを理由に、法的手続きによらずして自力救済をするケールがよく見受けられます。自力救済は、例外的に許される場合があるものの、緊急性や相当性を厳格に判断されるため、基本的には違法となります。

賃料不払い等を原因とする自力救済を行った裁判例を見てみます。大阪地裁判決(平成25年10月17日判時2216号100頁)の事案では、不動産管理会社の暴言や鍵ロックの取付等が加害行為に当たるとした上で、借家に居住できなかった約4か月半もの間生活する場所のない状態に陥ったこと等から慰謝料額80万円を認めています。

他にも、東京地裁判決(平成28年4月13日判時2318号56頁)の事案では、賃料債務保証会社が借家玄関扉に補助錠を設置し賃借人が借家に入れないようにして、さらに賃借人の家財を撤去した行為が不法行為に当たると認定し、財産的損害の他、慰謝料額20万円を認めています。

賃貸人や保証会社が賃料を支払っていない賃借人に対し賃借物から強制的に締め出す行為は、社会的問題となっています。裁判から強制執行までの費用を考えれば、慰謝料を払った方が安上がりだし自力救済した方が得なのではとの意見がありそうです。しかし、自力救済を行った結果、民事上の責任のみならず、住居侵入罪や窃盗罪等の刑事上の責任を負う可能性もあります。違法な自力救済を行う業者であるとの噂が広まれば、業務に支障を来すことにもなります。

不動産に関するトラブルは他にもたくさんあります。適正かつ信頼性のある不動産賃貸業を営んでいくのであれば、法的な問題が生じそうなときにはまず弁護士に相談されることをお勧めいたします。