Q:「私は、中小企業の代表取締役をしているのですが、65歳を迎えて、最近、回りの人から、今後、事業をどうするのか考えておいた方がいいよと言われるようになりました。事業を承継するには、具体的にどういう方法があるのでしょうか?いつから準備した方がいいですか?」

A:事業承継とは、会社の経営を、後継者に引き継ぐことです。誰を後継者とするかによって、大きく3つの類型に分類することができます。

①親族内承継

現経営者の子供(息子や娘)等の親族に承継させる方法です。
【メリット】
・一般的に内外の関係者から受け入れられやすい。
・早期に後継者を確定し、十分な準備期間を設けることができる。
・現経営者の経営理念を理解してもらいやすい。
【デメリット】
・能力や意欲がなく、経営者に向いていない場合がある。
・息子が数人いるなど、後継者選びが困難な場合がある。
・誰も後継者になりたがらない場合がある。
 
以前は、親族内承継が主流でしたが、2015年の中小企業庁の調査で、直近5年間では、親族内承継が減少して、65%以上が親族外承継という結果が出ています(みずほ総合研究所((株)「中小企業庁の資金調達に関する調査」(2015年12月))。

②役員・従業員承継

会社の役員や有能な従業員に承継させる方法です。
【メリット】
能力のある人材を会社内から広く探すことができる。
長年に渡って仕事に従事していたものであれば、経営方針等の一貫性を保つことができる。
【デメリット】
・親族内承継と比較して、内外の関係者から受け入れられにくい。
・従業員の場合、株式取得のための資力がない場合が多く、資金調達をどうするか問題となる。
・現経営者が、会社の債務を保証していることが多く、その対応が困難な場合がある。
      

③社外への引継ぎ

株式譲渡や事業譲渡等、会社を第三者に譲渡することで承継させる方法です。
【メリット】
・候補者を広く外部に求めることができる。
・現経営者は、売却益を確保することができる。
【デメリット】
・経営の一体性を維持することが困難である。
・希望する条件で買い手を見つけるのが困難な場合がある。
・最適な候補を見つけるまでに長時間かかる場合がある。

最終的に、どうしても適当な後継者が見つからない場合、廃業をせざるを得ない状況も生じてきます。廃業を避けるためには、時間に余裕をもって、後継者選びをする必要があります。

適当な後継者が見つかったとしても、後継者の育成期間が必要となりますので、すぐに承継するのが困難な場合があります。後継者の育成に必要な期間は、5年~10年という調査結果があります(中小企業基盤整備機構「事業承継実態調査」(2011年3月)ので、事業承継の準備には、5年~10年程度を要すると考えていただき、70歳で引退を考えるのであれば、60歳から事業承継に向けた準備が必要です。
65歳になられた相談者は、今すぐに準備にとりかかる方がよいでしょう。