Q:下請業者を守る、下請法は、どのような業者に適用されるのでしょうか?

A:次のとおり、「下請契約の内容」と「資本金の金額」を基準として、決められています。

更新日2017年5月16日
弁護士 田中 継貴

1 下請法とは

下請法は,親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめ,下請事業者の利益を保護する法律で,正式には,「下請代金支払遅延等防止法」といいます。
この法律が適用されると,親事業者は,発注書面の交付が義務づけられたり,受領拒否を禁止されたり,代金支払の遅延を禁止されたりします。
では,この下請法が適用される親事業者,下請事業者とは,どのような企業なのでしょうか。今回は,何を基準に,親事業者,下請事業者と呼ぶか,という点を中心にお話します。

2 資本金基準

下請法では,次のとおり,「下請契約の内容」および「資本金の金額」という2つの基準で区分けをしています。この4つのパターンしかありません。「下請契約の内容」である,物品の製造委託,修理委託と情報成果物委託,役務提供委託の区分については,別項で説明しますが,基本的には言葉の意味の通りです。また,建設工事については,下請法は適用されず,建設業法による下請保護が考えられます。こちらも別項で説明します。

(1)物品の製造・修理委託及び下記※の4業務の委託を行う場合

①親事業者資本金3億円超の場合
→下請事業者資本金3億円以下であれば下請法適用

②親事業者資本金3億円以下1000万円超の場合
→下請事業者資本金1000万円以下であれば下請法適用

(2)情報成果物作成・役務提供委託を行う場合(下記※の4業務の委託を除く。)

①親事業者資本金5000万円超の場合
→下請事業者資本金5000万円以下であれば,下請法適用

②親事業者資本金5000万円以下1000万円超の場合
→下請事業者資本金1000万円以下であれば下請法適用

※(1)のパターンに含まれる情報成果物・役務提供委託の業務が政令で4業務定められています。これらには,(1)のパターンが適用されます。

①プログラム
②運送
③物品の倉庫における保管
④情報処理

3 独占禁止法との比較

下請法では,適用されるか否かについて,明確な判断を行うために,資本金という形式的な基準で事業者を区分しているのです。このことは独占禁止法と比較するとわかりやすくなります。
下請法は,独占禁止法の一部(優越的地位の濫用の禁止)と同じ目的を有しています。独占禁止法では,どのような親事業者を規制しているのか,総合的な事情により判断されますので不明確ですが,下請法では,上記の通り資本金という明確な基準を持っているということになります。その意味では,下請業者にとって,独占禁止法よりもかなり利用しやすい法律ということが言えます。
なお,一方で,下請事業者よりも事実上立場の強い親事業者であっても,資本金さえ低ければ,上記の資本金の基準に該当しませんので,下請法は適用されません。

4 親事業者,下請事業者の補足

(1)下請事業者には,個人事業主を含みます。
(2)商社が間に入っている場合でも下請法が適用される可能性があります。しかし,商社の関与が事務手続の代行のみの場合など委託内容に関与がないような場合には,商社には下請法が適用されず,商社に発注した者が親事業者,商社から発注を受けた者が下請事業者となって,商社を挟んだ2者に下請法が適用されます。
(3)親事業者が,自分の子会社を通じて,製造委託等を行う場合,いわゆるトンネル会社に対する規制により,一定の要件のもとで,下請法が適用されます。
(4)建設業(建設工事)については,下請法は適用されず,建設業法による下請保護が考えられます。
(5)親事業者には,社会福祉法人,公益財団法人,公益社団法人,一般財団法人,一般社団法人,学校法人等も含まれる可能性があります。指定正味財産等の固定的な財産により判断されます。

5 まとめ

下請法が適用されるかどうかを考える際に,まず問題となるのが,この資本金の基準を満たしているかどうかです。皆さんの会社の資本金および取引先の資本金を確認してみてください。資本金は,法務局で,商業登記を確認していただければ,わかります。弁護士や司法書士でなくても商業登記は確認できます。
この資本金の基準に該当しなければ,下請法以外の法律(民法や独占禁止法など)による紛争解決を目指すことになります。